• 壮麗な絵画

  べこもち

  比喩の構築で立体的な奥行き、空間的な効果を生み出している。ボーカルの情感に伴奏が与える壮麗さと荘厳さの彩りが絵画を思わせる情趣で溢れている。
  
  そこに想像の棲むべき物語を詠む。
  ホイッスラーの「雨と海」をマチエールにして、脳内で合成した夕照で包み込む。
  
  この海岸通りとは日頃、終日物侘しいところなのだろうな。日没、影に満たされる時を待ちわびながら、持ち寄って焚べるものとは自分ならば何にしようか…
  安っぽい自己憐憫、自己欺瞞、悪癖と家族になじられた感傷…　一括りにして。
  （イェーツは修辞家は隣人を欺き、感傷家は己を欺くというが）　
  
  互いに持ち寄った悲しみ痛みも内実を知れば、互いに熔解出来ない孤独が炙り出されてしまうかもしれない。
  （ボードレールは群衆は孤独者の家郷であるというが）
  
  この情景が黄昏ゆく遠景の奥へと退きながら、燃え朽ちて虚空へと可聴域から外れた讃美歌とともに舞い上がってゆく。
  娑婆苦の桎梏からの解放となり、無為自然となるだろうか。
  
  
  
  

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